国連憲章第53条、第107条(第77条も一部関係しています)を、一般に「旧敵国条項」と呼んでいます。

これは、第二次世界大戦の際、枢軸国(※)だった日本・ドイツ・イタリア・ルーマニア・ブルガリア・ハンガリー・フィンランドを対象に、これら諸国が国連憲章等に違反した軍事行動(侵略等)を起こした際には、旧連合国(アメリカ等)が国連決議等の拘束力に優先して軍事制裁を課す事が出来る(第二次大戦の終戦処理のために連合諸国が行った講和条約等の諸措置を憲章が無効化または排除するものではないと規定)とした差別条項です。

しかし、戦後半世紀以上が経過した今日では、日本・ドイツ等が国連の中でも重要な地位を占める現状であり、同条項は既に死文化条項であり、時勢に合わない事等から、1995年の国連総会に於いて、同条項の国連憲章からの削除を求める決議が圧倒的多数で採択されました。

ですが、安全保障理事会改組問題の難航で、国連憲章の改正に支障を来しており、同条項の削除自体は未だ実現せず、明文化されたまま、残されています。


※枢軸国
第二次大戦当時の大日本帝国・ドイツ第三帝国・イタリア王国の三国を主体とする同盟諸国の事。1936年10月、独・伊が「共同行動をとる旨の協定」を締結。同年11月、日独防共協定が成立し、これに伊が参加、1940年9月、日独伊三国同盟が成立しました。
「枢軸国」とは、独伊防共協定締結の際、ムッソリーニがこれを「全ヨーロッパの枢軸」と称した事によります。